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2017年度にっぽん子育て応援団結成8周年記念フォーラム報告記

2017年度にっぽん子育て応援団結成8周年記念フォーラム報告記

2017/07/03

 にっぽん子育て応援団は5月28日、「すべての子どもたちが愛されて育つ社会づくりへ」と題した結成8周年記念フォーラムを東京・港区の明治学院大学白金キャンパスで開催しました。フォーラムでは、児童福祉法改正をテーマにした松原康雄・明治学院大学長の基調講演や、子ども家庭福祉分野の実践者を招いたパネルディスカッションが行われました。全国から参加してくださった100名の方々は、行政担当者、子育て支援者、研究者、学生、そして当事者と多彩で、参加者アンケートには熱いメッセージが寄せられました。

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【基調講演】
「すべての子どもたちと子育て家庭に手を差し伸べる社会へ
~児童福祉法改正と新しい子ども家庭福祉~」


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 今回(2016年施行)の児童福祉法改正の在り方について審議した厚生労働省社会福祉審議会の委員会「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」の委員長を務められた松原学長に本会の法改正の背景やポイント、これからの子ども家庭福祉のあり方についてお話しいただきました。

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 まず松原学長は、子ども・子育て家庭に関する課題として、少子化(第3次ベビーブームは出現しなかった)、子どもの貧困の広がり(平成24年度の子どもの相対的貧困率(=所得中央値の50%を下回る所得しか得ていない者)は16.3%でひとり親家庭の子どもの貧困率は54.6%)、子ども虐待の増加(子ども虐待の定義が見直され夫婦間暴力が心理的虐待と位置付けられたことから警察署経由の虐待が急増している)などを挙げました。
 その上で、児童福祉法はこれまで適宜改正されてきましたが、今回は「少しずつ改革することでは間に合わない」と急速なパラダイムシフト(考え方の対転換)が図られたと指摘しました。
 改正児童福祉法の大きなポイントは、子どもの権利が認められたことで(第1条)、児童の市民的権利や保護される権利も意識されていると説きました。また、第3条の2では、家庭的な環境での養育の重要性について言及し、国や市町村の役割を挙げていることにも触れました。具体的な措置としては児童相談所の強化で、平成30年を目途に設置自治体を拡大します。
 また、支援にあたっての重要な視点は、「子どもの力、親の力をいかに信頼するか」と支援者が当事者を信頼する重要性を指摘しました。児童養護施設の第三者評価モデル実施に際して、高校生が「初対面の人に本音は言えない」と意見したことからアンケート方式が採用となるなど、子どもたちは力を持っていることを強調しました。さらに、必要に応じて現存の新たな子育て支援活動を生み出してきた親の力も信頼するよう述べました。そのように当事者と支援者らネットワークを組んで子どもを育てることを「協育」と表現しました。
 さらに、子育て支援事業は当事者にはぜいたくなサービスだと思われているため、「必要な支援は使ってよいとの認識が社会的に共有されることが重要」と説き、それだけに当事者がすぐ情報にアクセスできる使い勝手の良さが重要だと指摘しました。その上で、「最後の課題は来ない人をどうするか。当事者が根負けして扉を開けるまで待つ必要がある」と粘り強い取り組みが重要なことを訴えました。当事者とコンタクトを取り続けるためのサービスを開発する必要があるとして、離乳食の宅配などのアイディアも例に挙げました。最後に、「子育てしやすいまちは、子どもが豊かに育つまち、子どもが豊かに育つまちは、高齢者や障害を持った人も暮らしやすいまちだ」と訴えました。

【パネルディスカッション 子ども家庭福祉のこれから】
 「すべての子どもが愛されて育つ社会に求められること」


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 松原学長の講演を受け、子ども家庭福祉の実際とこれからの展望についてさらに理解を進めるべく、立場の違う現場の実践者及び当事者をお招きし、パネルディスカッションを行いました。コーディネーターは、にっぽん子育て応援団団長の樋口恵子と勝間和代が務めました。

◎行政レクチャー「児童福祉法改正に伴う新しい動き」
 パネルディスカッションの冒頭、厚生労働省雇用均等・児童家庭局の吉田学局長が、子育て支援施策の動向について説明しました。まず、少子化社会対策大綱や子ども・子育て支援法、一億総活躍社会、働き方改革など、直近の課題群を挙げ、これらの施策が様々な課題を総合的に進めようとしていると整理しました。平成27年からスタートした「すくすくサポートプロジェクト」でも、ひとり親家庭や多子世帯などに対し、様々な施策を組み合わせて総合的に支援しながらも一人一人に寄り添う支援にも配慮している点を挙げました。その上で、「漸進的な取り組みでは間に合わないので、スピードを上げてやろうというのが今の段階」と言及しました。

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 また、子ども・子育て支援新制度については、地域によって異なるニーズにどうきめ細やかに対応するかがカギだと指摘。一億総活躍プランでは、働き方改革と子育て支援が一つになっており、保育と女性活躍、母子保健分野が盛り込まれていることを挙げました。
 さらに、高齢者施策を中心に、地域における包括支援の動きが進んでいることにも言及し、多職種連携が求められていると説きました。その際、顔が見える関係になるだけではなく、腕(何ができるか)が見える関係となり、腹(やる気)が見える関係なって初めて信用できると強調し、「そこまでいかないと地域では連携できない」と指摘しました。そして、子どもを地域で支援されてきた方々の間で連携を深め、さらに地域の実情に応じて高齢者や障害者、生活困窮者など分野を超えたコラボも始まっているとのコメントがありました。
 ここまで国が様々な施策を打ち出してきましたが、「制度や事業を活用するにしても、なによりも地域の皆さんがどう実践するかこそが大事」だと指摘。利用者にとってニーズに対応した取組みは、地域での実践事例から生まれてくるとして、それをどのように広げていくか期待していると訴えました。

◎パネルディスカッション

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 吉田局長の説明を受け、泉房穂・明石市長(兵庫県)、千葉県中核地域生活支援センターがじゅまるの朝比奈ミカ・センター長、埼玉県朝霞市子育て支援センターおもちゃ図書館なかよしぱぁくの住田貴子・施設長がそれぞれの実践を報告しました。
 まず、泉市長が市の子ども施策の特徴と考え方について説明しました。「親がお金を持っていたとしても、子ども自身がお金を持っているわけではない。だからすべての子どもを支援する。やれることは全部やる。それがまちの発展につながる」と子どもにシフトした施策を打ち出してきたことを明らかにしました。
 市が行った施策は具体的には、いわゆる一般的な子育て世帯が住みやすいまちとすることです。「子育てするなら明石」と銘打ち、子育て支援に特化した予算を編成(こども医療費の無料化、保育所保育料の2人目以降の無料化、中心地への児童養護施設配置、駅前への児童相談所配置予定、全小学校区に子ども食堂設置、里親100%など)しました。神戸市から明石市に引っ越せばこどもにかかる医療費等の負担が激減し、使えるお金が増えるといった比較広報を行ったことにも言及しました。
 こうした泉市長の行動の原点は、40年前にさかのぼります。障害を持つ弟に対し、遠くの学校へ通うよう行政が措置しました。最終的に近くの公立学校に通えることになりましたが、登下校をともにした泉市長は、「何かが間違っている。もう少し優しいまちにならないか」と考えてきたことを紹介しました。これは行政サービスが個人ではなく世帯で提供されることの問題だと認識。「子どもが親の持ちもの」となっている状況は現代も変わらないと指摘しました。そこから、離婚の際に最も不利益をこうむるのは子どもだが、その子どもを支援する仕組みがないとして、社会システムを作るために市長になったことを紹介しました。
 子どもへの予算シフトによって、明石市では人口が下げ止まり、人口が増加するほか、出生数も増加し、財政状況も好転していることが紹介されました。「すべての子どもたちをまちのみんなで育てる。親のものではない」と訴えました。

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 朝比奈センター長は、同センターの経緯について紹介。平成16年、堂本暁子知事時代にどんな相談でも応じる事業として誕生し、県の単独予算で整備されてきました。生活困窮者自立支援法ができる前、制度別の支援策が充実していても、現役世代の支援が少ない、複合した問題を抱える家族全体にかかわる仕組みがないという中で生まれたことが指摘されました。
 中核センターは、平日の日中以外でも相談支援を行うことが役割。がじゅまるは、市川圏域(市川市、浦安市)約60万人を対象とし、少ない職員でどうすれば相談を受けられるかを常に考えてきたと述べました。子育て家庭への支援では、精神疾患や軽度知的障害があるなど社会生活能力に不安のある世帯へのかかわりなどが求められたことを紹介。軽度の知的障害で障害者手帳を持たないなど、制度の狭間にある層へ支援してきたことが挙げられました。
 その後に始まった国の補助事業である「よりそいホットライン」には1日2万件を超えるコール。8~9割程度は行政窓口に相談しているが、聞いてもらえなかったケースが寄せられていると指摘されました。若年層には電話だけでは不十分とチャットやツイッターも活用。繰り返しの相談の末に地域の社会資源につなげていく際には、関係機関に一緒に出向いてつながったことを確認するといった出張型の支援も実施しているとのことです。
 支援の基本は、「その人の人生を理解するように努めること」として、対象で分けたり、時間で区切ったり、主に親族が担ってきた支援(病院の付き添いなど)も軽んじずに行うことが重要だと指摘。生活のしづらさの背景には愛着形成の不全や発達障害などが想定されますが、社会的なふるまいが身についていくことで対人関係が好転し自己肯定感も上昇していった事例があることを挙げ、「寄り添うとは、その人の人生につきそっていくこと」と説きました。
 これからについては、家族の構成員が少なくなってきているからこそ、いろいろな大人と出会う場となる地域は重要と指摘。ただ、地域共生社会の中で、「消極的な拒否」など地域活動に参加しない人をどうするかも課題となっていることに言及しました。子ども食堂に対して、「あそこは貧しい子どもが行くところ」とレッテル貼りをして理解し合えない状況があることを挙げ、「想像力と仕組みの不全は社会的に弱い立場の人にしわ寄せがいくと思い相談活動を続けている」と述べました。

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 住田施設長は、「親育ち、子育ちを支える場所」と題して、なかよしぱぁくの成り立ちと活動について説明しました。1992年、「障害のある子に豊かな放課後を過ごさせたい」と「なかよしグループ」でレクレーション活動を開始。それがのちに障害児学童に。2010年には学齢期の障害児向けのおもちゃ図書館「なかよしぱぁく」を作り、2013年には障害児学童やおもちゃ図書館の実績が認められ、市の委託を受けた子育て支援センターとなったことが報告されました。その一方、障害者の働く場として「なかよしかふぇ」をオープン。法人のベースとなっている障害児学童は、療育や訓練ではない毎日の遊びの場であり、親兄弟も含めて一つの大きな家族となるように運営されてことにも言及しました。
 自身の活動については、長女が生まれると長男はイライラするようになり、周囲では支援が必要な家族と思われてきたと振り返りました。長男は3歳で自閉症と診断を受け、おもちゃ図書館に通うようになる一方、通い始めた保育所で慣れない障害児保育に保育者が退職する事態となり自身も保育士資格を取得したということです。
 おもちゃ図書館とは、障害のある子どもたちにおもちゃのすばらしさと遊びの楽しさを伝える場。通っていたおもちゃ図書館は家でも遊べるようおもちゃを貸し出しており、利用者は障害のある子、その兄弟と親だけで、居心地のよい空間でした。それだけに、子育て支援センターとなり、自法人だからこそできる居心地のよい子育て支援を推進。約束事は最低限として、ふだんからコミュニケーションをとって情報共有を図るよう運営されていることを挙げました。
 利用登録は1100組を超えており、登録者には明確に障害がわからない子どもも多いということです。支援にあたっては、子どもが持って生まれた育てにくさや親子の相性など、親の困り具合に応じてサポートする柔軟性を重視している旨を報告しました。日常的にコミュニケーションを取り合うことで、自分の子どものことしか見えていない母親でも、子どもとの付き合い方を学ぶようになり、その後ほかの母親を支援する側にまわる。母一人で相談にくる場合でも、自分のために時間をとってしまって申し訳ないと思わないようにサポートを依頼、再び相談に来やすくなると説きました。
 ただ、最近、「本当に支援が必要な人にとってセンターは敷居が高い場所になっているのではないか」と自省。本当の支援とは何かについて悩んでいると話しました。その一つが、障害児を取り巻く環境の変化。放課後等デイサービス制度がスタートし、保護者がサービス事業者に丸投げしている状況が見受けられます。特別支援学校前にはデイサービスの送迎バスが並び、障害児たちが各々施設へと送り届けられる。仲の良い友達同士が一緒に食事をとったり、保護者が他の成長を見守ることも少なくなっているのではないかと問題提起しました。「自分の子もかわいいが、他の子もかわいいと思える経験が必要。子どもに障害があっても周囲のサポートを得て子育てを楽しめる社会になってほしい」と訴えました。

◎ディスカッション

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 まず、勝間和代団長が、産後うつの母親に対して具体的にどんな支援が可能か問いかけました。
 吉田局長は、子育て世代包括支援センターで情報を収集・発信するほか、こんにちは赤ちゃん事業で母子保健関係者が目配り。平成29年度から、アウトリーチ型の産後ケアもスタートしていることを紹介しました。
 泉市長は、新生児親子の面談は必須だが、母子健康手帳を取りに来ない保護者には、担当者が渡しに行き、連携を持つことを報告。自殺願望の親に対しては、保健師を中心に家事援助など総合的な支援を実施。児童手当は振り込みとせず、支給するときには子どもの健康を確認。健診に来ない場合には家庭訪問を実施して子どもを視認していることも明らかにしました。母親の負担を軽減するために、ショートステイの受け入れ施設も充実させたことを明らかにしました。
 朝比奈センター長は、新生児全戸訪問で心配な家庭は挙げられるはずなので、行政と民間が力を合わせてフォローする必要があると指摘。自殺願望のある保護者に対して、継続して関わりを持つことで背景に抱えているものを探っていくしかないと指摘しました。
 住田施設長は、全戸訪問でハイリスク家庭も含めて把握されるが、上の子が障害児で行政とのつながりがあったとしても、母親が育児疲れでハガキを出していないといった場合、下の子が行政の支援の手からこぼれるケースもあると問題視しました。

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 次に勝間団長は、パネリストに個別の問いを投げかけました。
泉市長には、子どもの財源を持ってくるにはどうしらよいのかと質問、泉市長は、一般的な世帯でも1%程度は無理してでも子どものために使っていると想定し、市役所でも同様に、2000億円の年間財政のうち20億円を子ども向け予算として最初に確保していることを紹介しました。

 朝比奈センター長へは、制度のはざまからは何が抜け落ちているかと問いかけました。
 朝比奈センター長は、「家庭基盤の弱い子が課題」と指摘。また10歳代後半以降の対応も社会的課題としました。点々と居所を変える世帯は近隣が気づきにくく、行政が追えないために支援の手からこぼれやすいと言及しました。
 これに加えて泉市長からは、明石市では希望者に対し児童扶養手当は毎月届けることとし、家庭に届ける際に、家計簿支援を行う取り組みを始めた旨を説明。一人親家庭が現況届を出す際に、500円の図書券を渡す代わりに2時間の相談を組み込むなど、マンツーマンの相談支援を行っていることを紹介しました。

 住田施設長へは、弱い人が排除されない社会づくりに向けた具体的なヒントを問いました。住田施設長は、障害児を育て大変な思いをしていた時、近くの保育所の一時保育につれていくと保育所ではプール遊び中で、水大好きな長男が服のまま飛び込んでしまったところ、園長はとがめだてせずに「水好きでいいね」と言いながら服を脱がせて受け入れたエピソードを紹介し、禁止事項を挙げずにコミュニケーションをとって受け入れることの重要性を挙げました。

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 これらを受けて吉田局長は、地域社会づくりのためには場所や人が大事だが、実際には進んでいる地域と進んでいない地域があり、行政としてシステムを作ることはできても、アセスメントがないと個別対応は難しい。実践していただく方々には、専門性とスキルと志がないまぜになって求められる。制度をつくる場合には、それぞれの地域で柔軟に活用できる余地を入れながら、全国に広げられるように考えたいと話しました。
 また朝比奈センター長は、基盤の弱い若年層の拠点がほしいと主張。地域の中に子どもたちの育ちを見守る際、成長すると答えが一つでない不協和音が出る。連携が必要だが、「みんなが同じミッションでつながるとがちがちになるので工夫が必要」と指摘しました。
 勝間団長は、当事者や行政の意見を聞くことで現実問題として何か抜け落ちているのか、どう連携するのかが分かったのではないかとまとめました。

◎締めくくりの挨拶

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 樋口恵子団長は、子どもに予算が少なすぎると立ち上がって8周年、先進国の中でも低かったが、少子化のプレッシャーもあり、社会保障に位置付けられ、子ども関係の予算がたちあがり、困難を抱える子どもにも目が向けられるようになったことを振り返りました。子ども・子育て支援新制度がスタートし、「制度が変われば社会は変わる。ほんの一部かもしれないが、社会の仕組みが変わると人々の意識も変わる」と指摘し、今後に期待を寄せました。「8年目はまだ夜明け。人間の命を守る、人間の安全保障は主として厚労省に頑張ってもらいたい。私たちも頑張る。いつの時代でも最も被害にあっているのは子ども。全ての命が愛され認められ、褒められ自信をもって生きていける社会をみなさんと創っていきたい」とまとめました。

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