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緊急フォーラム「大変だ! 子どもの未来が崩れそう」を開催しました

緊急フォーラム「大変だ! 子どもの未来が崩れそう」を開催しました

2017/11/24

にっぽん子育て応援団緊急フォーラム
「大変だ! 子どもの未来が崩れそう」

 にっぽん子育て応援団は10月1日、東京家政大学板橋キャンパス120周年記念館1階多目的ホールで、緊急フォーラム「大変だ! 子どもの未来が崩れそう」を開催しました。フォーラムでは、子育てひろばや行政などから子ども・子育て支援の現状について報告が行われた後、ふるさと納税や企業の社会貢献活動など子ども・子育ての財源を確保する手法が提案され、すべての子ども子育て家庭に支援が行き届くようすべての大人で負担を分かち合うよう求める緊急アピールを採択しました。

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◎パネルディスカッション「これが子育ての現実だ」
 NPO法人子育てひろば全国連絡協議会理事の岡本聡子さん、沖縄県南風原町民生部こども課長の前城充さん、兵庫県明石市福祉局こども総合支援部長の佐野洋子さん、東京家政大学短期大学保育課准教授(女性未来研究所研究員)の平野順子さん、東京家政大学子ども学部長(小児科医)の岩田力さんがパネリストとなり話題提供。コーディネーターを団長の安藤哲也、勝間和代が務めました。

 まず、岡本さんがご自身(ふらっとスペース金剛)の実践について紹介。大阪府富田林市内で2003年から地域子育て支援拠点事業4か所を運営、現在は市から養育支援家庭訪問事業(育児ストレス、産後うつ病等で不安や孤立感等を抱える家庭に子育て経験者等が訪問し育児・家事の援助をしたり、保健師等が指導助言し、家庭の諸問題の解決、軽減をはかる事業)を受託し、今年6月からは大阪府から委託を受け児童虐待の通報を受けた児童の安全確認業務を行っていることを明らかにしました。
 その上で、ひろば全協が地域子育て支援拠点の事業所240団体、母親2400人(1175人が回答)に実施したアンケート調査の内容を報告。利用者は35~39歳が多く、仕事はしていない利用者が9割だが、うち2割は育児休業中で、ひろば利用者は在宅子育て世帯だけではなくなっている現状にあることなどを紹介しました。そして、アンケートで発見されたこととして、7割の母親が自分の生まれ育った市町村以外で子育てしていることを挙げ、これを「アウェイ育児」と呼びました。「アウェイ育児」では、近所で預かってくれる人が少ないなど孤立感の中で子育てしている割合が高く、アウェイ感を増大させていることにも触れました。子どもが少なくなるほど親の孤立感は深まり負担感は増すとして、親に寄り添う支援の必要性が強調されました。そして、育児休業や多様な働き方をする子育て家庭への支援のためにも保育所や家庭的保育などと拠点が連携していく必要性を訴えました。
 南風原町の前城課長は「子どもの人権を考える~ひとりぼっちの子どもがいないまちを目指して」と題して南風原町の取り組みについて報告しました。人口3万8000人の同町は人口30万人の那覇市の右隣に位置し、生活圏は那覇市と重なる。子ども施策に力を入れているため移住が多く、平均年齢34歳の若い町で合計特殊出生率が2.07と人口が増え続けている町でもあります。全国と比べて貧困率が高い沖縄県において、同町では子どもの貧困対策を「孤立対策」と呼んで取り組んでいます。貧困の課題として、若年出生率、高校不登校率、高校中途退学率、中卒後の進路未決定率の高さに注目。同県では離婚率が高いが、その理由は夫の生活力がないことであり、その点は中卒とも関連。一人親家庭では、昼間働く場がないために夜の仕事に就き、子どもは夜、親がいない寂しさから特定の家をたまり場とし、夜間徘徊や非行に発展、不登校が増えるという連鎖が生じる。中学校で不登校のまま卒業すると若年出産にもつながるなどリスクが高いと認識、小学校の不登校児をフォローしてゼロにするか、孤立する子どもを減らすという観点で包括的に取り組んでいる旨を報告しました。平成28年度からスタートしたのが「子ども元気ROOM」。365日、夜22時まで支援を必要とする子どもに対応し、生活指導、学習支援、食事の提供、キャリア形成などを実施している。養育支援のために送迎も実施。保護者は最初、拒否反応を示すが、子どもが安定してくると心を開き保護者も変化していることなどが報告されました。
 明石市の佐野部長は、「こどもを核としたまちづくり」について報告しました。神戸市に隣接した明石市の合計特殊出生率は1.58で人口とともに上昇中。子どもを核としたまちづくりとして、次々と施策を展開していることで、子育て世帯が流入し、税収が増加、戸建て住宅の新築やマンションの建築などによる地価の上昇、町のにぎわいなど好循環が生まれていることを報告しました。明石市長は、子ども施策にお金を投入すると、それは必ずまちづくりにつながるとの信念をもって取り組んでおり、現実に町が元気になっていると自分も感じると話しました。
 その上で、子どもを核としたまちづくりの理念について言及。①すべての子どもを対象とする②支援の必要性も多様化しているので、子育ては親だけに背負わすものではなく地域みんなで支える③親目線や行政のやりやすさの視点ではなく、子ども目線で考える――との3つのポイントを挙げました。そして、市ができることはあれもこれもすべてやると、総合支援を進行していることを強調しました。具体的な施策としては、早期の気づきと対応策として妊婦の全数面接を実施、地域での子ども食堂の展開、困難な状況におかれた子どもへの支援として無戸籍をはじめ様々な支援。教育の充実として30人学級の導入、経済的支援として医療費の無料化、第二子の保育料の所得制限なしの無料化、社会的養護が必要な子どもへの支援に里親プロジェクの展開。31年4月には中核市となるので、児童福祉法改正後初の児童相談所設置を目指していることも明らかにしました。また、明石市こども総合支援条例には、支援が必要なこどもへの取り組みも条文化し制定していることを報告しました。
 事例を受けて平野准教授が現状から見えてくる家族の変化や現在の子育ての問題を整理。現在の子どもや子育て家庭は様々な社会の影響を受けやすく、家族がセーフティネットとなりえていないことを指摘。世帯の小規模化、単身化が進んでいる。若年層の経済的不安定化が進み共働き率が上昇しているが、何かあった時に経済的に不安定な状況に陥りやすい点も指摘した。子育て家庭の孤立化も進み、子育ての悩みを相談できる人がいるという人が2002年から2014年で減少し、子どもを通したかかわる人がいない人も増えている。その一方で、家庭での育児が女性に偏っている。子育てでイライラする人が増えている。
 各国の家族関係社会支出の対GDP比をみると、日本全体では子どもにお金をかけていない。過去と現在を比べて家族が変化し、子育てをしている親の意識も変わっているが、周囲の意識は変わっていない点も挙げました。若年層は家庭を持つ事を想像できないだけに、家庭で育児をする場合の実質的な後ろ盾が必要だと説きました。
 さらに、岩田子ども学部長は、小児科医と保育士の専門性の共通点について言及。小児科医は、子どもの健康発育・発達にかかわりながら、子どもが自分の可能性を引き出せるよう関与し、子どもや家庭の健康や福祉の支援に関与するだけではなく環境にも関与する必要があること、子どもは社会の再弱者だけに不利益を被りやすく特別な注意を払う必要があることなどは同じであり、保育士も専門性を社会に訴えていく必要があることも説きました。

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◎提案タイム「まずお金! 財源について考えよう」
 小泉進次郎衆議院議員らが「こども保険」を提起したことを受け、多様な財源確保の在り方を提起し議論する予定でしたが、衆議院解散が決まったことから小泉議員が欠席となり、「こども保険」についてはコーディネーターの奥山千鶴子企画委員が説明。多様な財源の在り方については、東京都文京区(ふるさと納税の活用)、住友生命保険相互会社(企業の社会貢献活動)、日本労働組合総連合会(拠出金制度など)から発表がありました。
まず、「ふるさと納税 目的は困窮子ども家庭の生活支援」と題して、東京都文京区子ども家庭部の鈴木裕佳・子育て支援課長が説明。29年度重点施策として子どもの貧困対策に取り組む同区で、いくつかの機関を連携して「こども宅食プロジェクト」が始まったことを報告しました。ふるさと納税寄附受付前の初期経費は村上財団、広報についてはNPO法人フローレンス、対象とする貧困世帯への周知は文京区が行い対象者は個人でフローレンスに申し込む。RCFが食材を調達し、NPO法人キッズドアが食材を梱包・配送するなど役割分担して連携している。同事業は、食材を届けることを入り口として定期的に訪問することで気付きを得る。虐待等のリスクに陥る前の支援につながると期待している。貧困対策に出遅れていた同区で様々な施策の総合展開を検討する中、人知れずに届ける工夫はないかと思案。同じくして貧困世帯へのアプローチに限界を感じていたフローレンスから、こども宅食のアイディアが持ち込まれ、ふるさと納税で財源が作れないかかと提案があり実践。ガバメントクラウドファウンディング(ふるさと納税)で2400万円の寄付を集めたが、寄付者からは文京区ということではなく、貧困対策の成功事例を作って全国に届けてほしいとの意見あり、社会的課題に財源をどう集めるかという観点で一つのアイディアになるのではないかと問題提起しました。
次に、住友生命保険相互会社の松本大成・ソーシャルコミュニケーション室長が、「未来を強くする子育てプロジェクト」について説明。事業がスタートして10年経過したが、同社プロジェクトの受賞を契機に周知され、自治体の委託事業を受けるなど息の長い活動になることを期待して支援していることを説明。全国の団体等を直接支援したくとも財源には限りがあるため、表彰制度を通じてアイディアを発掘し世の中に拡がることを期待している旨を明らかにしました。
 また、連合の平川則男総合政策局長が、「子ども子育て支援の財源について」と題して意見発表。社会保障制度は社会保険料と税により財源が賄われていますが、社会保険料のうち半分は従業員(被保険者)が負担しています。686万人の組合員がいる連合は最大の被保険者の組織で社会保障制度に積極的に関与する役割があると説きました。子ども・子育て支援の財源に関しては、新制度の準備段階の検討にも参画して様々な勉強会を開催、「前提として社会保障税一体改革をやってもらいたい」と現行の新制度の遂行を求めました。その上で、さらに拡充すべきサービスとして待機児童解消と保育人材の確保に言及、幼児教育の無償化はその後の検討課題としました。これ以上の財源確保に関しては、「社会全体で支えるということでは税による財源確保が原則」とし、それに加えて子ども・子育て拠出金(事業主と国民による拠出)の創設も含めた方策も考えるべきと指摘。小泉議員らが提唱する「こども保険」については、「子育てをリスク化と捉える点で抵抗感がある」と訴え、拠出金という仕組みで国民が負担し子ども・子育てを支えることが可能なのか検討する必要があると説きました。
「こども保険」について奥山企画委員が説明。消費税の10%引き上げ分から子ども・子育て支援新制度に充当する7000億円は増税が実現していない段階ですでに使われており、さらなる財源確保が必要だと「こども保険」を打ち出したこと、社会保険料0.1%増で3400億円の財源が確保され就学前の子育て世帯に対し月5000円程度の軽減が可能となり、0.5%増では約1.7兆円が確保され月2万5000円程度の負担軽減となり実質的に幼児教育が無償化される、1.0%増で約3.4兆円が確保されさらに踏み込んだ子育て支援も可能になると試算したこと、社会保険料として厚生年金、医療保険、介護保険、雇用保険、こども保険が並べられたときに子どもへの支援の少なさが顕在化する効果も狙っていることなどを紹介しました。

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 これらの意見を受けて参加者が数人のグループになって意見交換。多様な財源確保の手段があること、財源の使われ方にも注意する必要があることなどの意見が出されました。
 奥山さんは、「にっぽん子育て応援団では子どもの財源をいかに集めるか、財源確保に向けて引き続き、取り組んでいきたい」と訴えました。

◎アピール
 参加者の賛同を得て、安藤哲也団長と勝間和代団長が「現世代のすべてのおとなたちで負担を分かち合い、子どもの未来を拓くための緊急アピール」を読み上げました。

現世代のすべてのおとなたちで負担を分かち合い、
子どもの未来を拓くための緊急アピール

子どもは未来からの預かりものです。
そして、今のおとなたち、私たちの誰もが、かつては子どもでした。
私たちが今、ここにあるのは、生み育ててくれたおとなたちがいてくれたからです。自分では何も出来ず世話が焼け、騒がしく周囲に迷惑ばかりかけていた私たちを慈しみ、手も声もかけ、居場所を作ってくれた、家族と地域のおとなたちのおかげで、今があります。
新たに生まれて来るいのち、今を健気に生きているすべての子どもたちの成長を、すべてのおとなたちが手をつなぎ、心を寄せ合うことで、この社会全体で支えていこうではありませんか。それこそが、未来を拓くことにつながります。

子ども・子育て支援や教育について、これから非常に重要な議論が行われようとしている今、今日緊急フォーラムに集った私たちは、子どもの最善の利益の観点から、

○ すべての人に開かれた機会を確保するためには、「すべての子どもと子育て家庭に行き届く支援」が必要であり、具体的な政策の立案に当たっては、様々な困難を抱える子どもや子育て家庭に行き届き、決して取り残されることのないよう構築されること

○ 子どもの育ちを支え、応援していくためにも、そのために必要な経費については、今を生きる私たちすべてのおとなの責任で負担し合うこと

が重要であることを確認し、ここに宣言します。

2017年10月1日
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