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2022年度企業・団体サポーター交流会開催のご報告

2022年度企業・団体サポーター交流会開催のご報告

2022/11/16

2022年10月18日(火)16:30〜18:00、2022年度企業・団体サポーター交流会「男性育休取得率を上げる改正法対応のコツ 誰が休んでも回る職場をどう作る?」を開催しました。

冒頭、にっぽん子ども・子育て応援団団長の勝間和代より、今回の交流会開催の趣旨説明を兼ねた開会挨拶を行いました。勝間は兼ねてから「男性育休取得はボーリングの一番ピン」と呼んでおり、日本がもっと子どもと子育てに優しい社会になるには、男性の育児休業取得が当たり前になるかどうかが鍵と訴えてきました。昨年度ようやく我が国の男性育休取得率が14%になりアメリカには追いついてきましたが、北欧の7割、8割の取得率に比べたら、まだまだ追いついておらず、取得期間が3日とか1週間くらいでとても短い現場から、育休をきっかけに企業がどうコミットできるようになるのか、育児・介護休業法改正のレクチャーや基調講演を踏まえ、みなさんとお話ししたいと述べました。

スクリーンショット (ブレイクアウトセッション後).png

行政レクチャー 育児・介護休業法改正のポイント
続いて、厚生労働省雇用環境・均等局職業生活両立課育児・介護休業担当係長の中島しずかさんから、今回の育児・介護休業法改正のポイントについてレクチャーいただきました。

改正の背景として、現在約7割の女性が第1子出産後も就業継続していますが、離職した人の41.5%の人が「仕事と育児の両立が難しい」を理由に上げている現状を挙げています。夫の家事・育児時間が長いほど妻の継続就業割合が高く、第2子以降の出産割合も高いというデータもあり、男性育児休業取得は女性の就業継続の鍵であるだけでなく、少子高齢化の歯止めにも寄与すると考えられる側面もあります。国は、令和7年に男性育児休業取得率30%を目標として掲げていますが、令和3年では男性育休取得率は13.97%にとどまっています。男性自身は4割以上が育休取得を希望していますが叶わず、希望と現実との乖離が認められます。男性が利用しなかった理由としては、「収入を減らしたくなかったから」がダントツで、ついで「職場の理解が足りなかった」、「自分にしかできない仕事を担当していたから」などが挙げられ、職場の理解が追いついていない部分に問題があり、国としても取り組んでいかなくてはいけないとの認識があったそうです。

こういう現状を踏まえ、どうやって育児休業を取得しやすい職場環境に変えていくのかが今回の改正のポイントとなります。すでに令和4年4月1日から、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対して、育児休業制度について給付内容などの詳しい説明と休業取得意向の確認を行う機会を設けることを事業主に義務付けています。さらに育児休業を取得しやすい雇用環境の整備として、職場の理解を深めるよう制度に関する相談体制の整備や研修、関連情報の提供なども義務となっています。実務上、育児休業取得に向けた意向確認の場は、あくまでも育児休業を円滑に取得できるように設けるものであり、取得を控えさせる場にしてはならないことに留意してもらいたいと強調されました。雇用環境整備については、一つでも対応すれば法的には充足しますが、可能な限り複数実施することで、より効力を発揮すると話されました。
また、同じく4月1日から施行されているのが有期雇用労働者の要件緩和で、「引き続き雇用された期間が1年以上」は要件から撤廃され、「1歳6カ月までの間に契約が満了することが明らかでない」のみが要件となっており、取得の幅が広がるのではないかと期待を寄せているとのことです。有期雇用労働者の取得の際は、労働契約の更新がないことが明確でないことが要件となっています。
この10月1日からの施行部分としては、「産後パパ育休」(出生時育児休業)と分割取得があります。まず、「産後パパ育休」は本来の育休とは別に取得が可能で、対象期間は子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能。これまでの育休とは違い、原則休業の2週間前までに申し出れば取得できます。子どもが産まれて大変な時期に、男性も育休を取得しやすいように設定したそうです。分割して2回取得が可能で、8週間の間にどのように分割しても、あるいは丸ごと取得しても良い柔軟な制度となっており、働かないことを前提としている育休ですが、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能とのこと。取得しやすさを考慮しての措置で、育児休業本体も2回分割取得できるようになっており、「産後パパ育休」と合わせれば4回に分けて育休を取得でき、仕事の繁閑など自分のスケジュールに合わせて取得しやすくなったのではとのことです。
令和5年4月1日から施行されるのが、常時雇用する労働者が1000人を超える事業主に向けた、年に1回の育児休業取得率などの公表の義務付けです。公表内容としては、育児休業等の取得割合あるいはそのほかの目的休暇との合算取得割合などとなっています。インターネットの利用を推奨しており、厚生労働省のHPにある「両立支援のひろば」に各企業の仕事と育児の両立について公表できるページや各企業のHPでの公表が可能です。
今回の法改正によって、ますます男性の育児休業取得が盛り上がっていくことを期待していると締め括りました。

スクリーンショット (厚労省中島さん).png

行政レクチャー質疑応答
レクチャーの後に行った質疑応答の内容は以下のとおりです。

Q1 従業員数1000名以上の企業の育児休業取得率の公表について
その1 公表頻度は決まっているか。
A 事業年度に則って、年に1回公表。

その2 グループ会社で1000人を超える場合は、各社で公表することになるのか、あるいはグループまとめての公表も可能なのか。
A 各社ごとに公表していただくこととなり、グループまとめての公表はできない。

その3 同一グループでも1000人未満であれば、公表義務なしとの判断でよいか。
A ご確認いただいたとおりで、事業主ごとに判断させていただく。

Q2 上場企業に対する育児休業取得率の公表義務はあるのか。
  A 公表対象者は事業規模での設定となっており、上場しているか否かについての線引きはしていない。

Q3 育児休業を取得しやすい雇用環境整備について、社内研修、個別周知・意向確認、事例紹介、制度・方針周知ポスターの掲示などが挙げられており、複数の実施が望ましいとのことだが、実施の優先順位などはあるのか。
  A 特に優先度は設けていないが、窓口の整備を選択される企業は多い。できることなら全ての実施が望ましいと考えているが、可能な限りでお願いしている。

Q4 「産後パパ育休」は男性のもの、産休は女性のもので、育児休業は男女の別ない設定で取得できるものと考えてよいか。
  A 「産後パパ育休」等ネーミングで誤解されやすいところだが、養子縁組も対象としているので、「産後パパ育休」=出生時育児休業は女性も取得できる。ただし、女性が産後休業を取得した場合は、「産後パパ育休」取得はできない。

Q5 「産後パパ育休」と育児休業は別物なので、両方とも取得してよいが、「産後パパ育休」は産後8週間以内に4週間取得できるものなので、産後すぐから続けて取得したい場合は、育児休業を利用するという理解でよろしいか。
  A ご認識のとおりである。産後すぐからまる1年間育児休業を取得したい場合は、育児休業取得を選んでいただければよい。

Q6 「産後パパ育休」及び育児休業期間中は無報酬となるのか?
  A いずれも、これまで通り取得6カ月間は休業開始前の賃金の67%が育児休業給付金として支給されるとともに社会保険料が免除されるので、実質8割程度の報酬が支給される計算になる。

基調講演
「男性育休取得率を上げる改正法対応のコツ 
 誰が休んでも回る職場をどう作る?」

続いて、にっぽん子ども・子育て応援団企画委員で株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵が「男性育休取得率を上げる改正法対応のコツ 誰が休んでも回る職場をどう作る?」と題した基調講演を行ないました。

まず、これまで数々の政策提言を大臣や国会議員の方達に直接手渡して、色々な政策をぐいぐい推しているのは、実はにっぽん子ども・子育て応援団で、ぜひみなさまもアイデアを寄せていただき、政策の中に取り込ませていただきたいとにっぽん子ども・子育て応援団の紹介を行ないました。

これまで2年以上、男性育休取得増加について取り組んでおり、企業のトップが署名をして、「男性育休取得100%を目指します」と宣言した企業は現在144社になったそう。
この4月は、漏れなく育児休業が取得できると周知、意向確認することは頑張りましたが、雇用環境整備の義務化について対応できなかった企業が多かったと振り返り、この秋から環境整備にも努め始めた企業が多いので、みなさんも今の時期から始めればと促しました。環境整備について、具体的には本人に向けた「父親学級」と上司や周囲の同僚に向けた「意識改革研修」の両方を実施していくと意識がグッと高まるので、非常に効果的であるとともに、取得しやすい空気が醸成されるとのことです。
10月からの法改正の中で、「休業中の就業」は、非常にニーズがあるのに実現できなかったことの一つ。育児休業中は働けないため、妻の出産の前後に自分が関わる大事なイベントがあるなどで、育児休業取得のほうを諦めてしまうケースがありました。法改正で「産後パパ育休」の期間だけは柔軟に働けるようになりました。ただし、これは労使協定を結んでいないと使えません。労使協定の雛形は厚生労働省のサイトに掲載されており、これを活用すれば簡単に作れるし、社会保険労務士さんがいらっしゃる企業なら簡単にできるそう。ぜひ労使協定を結んで「産後パパ育休」期間中にも柔軟な働き方の実現、男性の育児休業取得増加実現をとのことです。
来年4月から始まる育児休業取得等に関する公開は、自社決算の時期によって公表時期が違ってきます。3月決算なら6月まで、9月決算なら12月まで、12月決算なら翌年の3月までに公表することになります。問題なのは12月決算の企業で、2024年の3月まで公表しなくてもよいですが、それでは人材獲得上もったいないと小室委員。2022年12月末までの数字で他の企業と同じ時期に公表するメリットをご理解いただき、積極的に活用をと呼びかけていると言います。
さらに、今回有価証券報告書にも男性育児休業取得率等を掲載、開示することが望ましいという形になっており、「人事にとっては追い風だ」と小室委員。有価証券報告書にも記載となれば経営トップの意識が全然違ってきます。しかも、来春の採用における大きなムーブメントになり、就活サイトや雑誌などで男性育児休業取得率ランキングなどの特集が組まれるだろうと予測。経営層の本気度をもう一段ギアを上げさせるチャンスでもあり、早めにトップに説明に入ることが大切で、最大限活用していただきたいと語りました。

スクリーンショット (小室さん).png

法改正に直結させた話の後、男性育休取得率を上げることが必要な理由と、誰が休んでも回る職場づくりの重要性について、さらに詳しく、実例を盛り込んだ話になりました。
男性育児休業取得率を上げる前に立ちはだかる二つの壁があり、一つは本人の意思の壁で、もう一つが妻の意思の壁であると指摘。本人は、育児休業取得の必要性、本質を理解しないままに取得しないという選択をしてしまい、妻は第一子出産の場合に産後のイメージがつかないことから現実にそぐわない選択をしてしまいがちです。実は、産後の母親の死亡原因第1位は産後うつによる自殺で、産後2週間から1カ月がピークとなるのです。この時期に7時間の睡眠と朝日を浴びての散歩を行うことが、妻の自殺や児童虐待防止にもつながります。夫の関与をいかに引き出していくかが、重要な鍵になるのです。だから、「企業主導型父親学級」の開催、できれば夫婦揃っての受講を促し、男性の育児休業取得の重要性を伝えて、取得を促すことが重要であると説きます。
さらに管理職に響くのは、妻の愛情曲線の話で、出産前までは夫に100%注がれていた妻の愛情は、出産後には一旦全て子どもに向けられますが、やがては夫への愛情が回復するグループと低迷したまま戻らないグループに分かれると言います。どちらになるかは産後すぐの育児参画の度合いが重要で、特に産後1年間に夫婦で感情の共有ができたかどうかが、その後回復に向かうか否かを決定するとのこと。
さらなる問題がパタニティー・ハラスメント、通称パタハラ。問題の本質は常日頃から「誰が休んでも回る職場になっていないこと。本当の壁は、「休んだら周囲に迷惑がかかるような」脆弱な組織体制にあると指摘。このような職場は災害にも新型コロナウイルス感染拡大にも弱いとのこと。これを機に「誰が休んでも回る職場を作る方法」の研修を行い、事情がなく見える独身の人も普段から休みが取れる職場に変えようと呼びかけました。
環境整備義務対応の講座で、ぜひ伝えてもらいたいことを対象別に列記したスライドを示しました。管理職は特に「誰が休んでも回る職場を作る具体策・他社事例」を伝えます。本人には男性育児休業の必要性と、復帰後も長く続く両立生活を夫婦でマネジメントするコツを伝えます。同僚に向けては、特別な事情がなくても休める職場づくりの方法やアンコンシャスバイアス解消研修で、誰にも独自の事情があることを擬似体験させます。
次いで、誰が休んでも回る職場を作る方法として、具体的な他社事例を紹介しました。朝メール、夜メール、カエル会議を活用、各自の業務を30分単位で見える化し、情報共有に繋げ、とっさに交代できる状況を作っておく。何にどれくらい時間を使っているか、生産性を意識して業務を組み立てていくトレーニング。カエル会議でチームの課題と解決策を共有していく。誰かが休んでパンクするような状況にならないよう業務の取捨選択もチームで行う。付箋を用い無記名でアイデアを一斉に出すなどフラットな意思決定の方法を採用する。具体的な育児休業取得の推奨期間を提示、職位の高い人からできる限り変えていく、オンラインの活用などで育児や介護で働くことに制限が生じる従業員でも本来の力を発揮できる働き方を開拓など。
誰が休んでも回る職場を作り、男性もお迎えを担当するなど仕事の生産性と時間への意識を高め、女性が復帰後も責任ある仕事を引き受けられるようになり、夫婦の収入が安定し、子育て後半の難しい時期も夫婦で乗り切り、それを見て育つ次世代が、自分が子どもを持つことに希望を持ち、熟年離婚も減少して生活保護予備軍世帯が減り、定年後のQOLの向上へとつながる。
男性育児休業取得推進により、日本中に信頼の好循環が醸成される、どうぞご一緒にと呼びかけ、締め括りました。

参加した企業・団体サポーター様から
参加してくださったサポーター企業・団体から一般社団法人全国子育てタクシー協会の山口さんから、事業概要とサポーターであることのメリットについてお話しいただきました。事務局を担っているのは、横浜市で地域子育て支援拠点や保育所などを運営する認定NPO法人びーのびーのさんで、子ども・子育て世帯へのサポートも重要なサービスと考えるタクシー会社は増えているそうです。大きな規模の会社は自社での研修が行なえますが、規模の小さな会社に向けて、子ども・子育て家庭への理解を深め、心のこもったサービスの実現に向けた研修を担っているのが一般社団法人全国子育てタクシー協会とのこと。タクシーの監督庁は国土交通省ですが、にっぽん子ども・子育て応援団のサポーター企業・団体となることで、子ども・子育てに関するさまざまな情報が得られ、協会加盟企業にも情報提供をすることで喜ばれているとのことです。メリットについてもお話しいただけたことは、にっぽん子ども・子育て応援団としても大変ありがたいことでした。

交流タイム ブレイクアウトセッション
「誰が休んでも回る職場をどう作る」

後半は交流タイムとなり、にっぽん子ども・子育て応援団団長の安藤哲也のコーディネートにより、8つのグループに分かれて、「誰が休んでも回る職場をどう作る」をテーマにブレイクアウトセッションを行ないました。
安藤団長、勝間団長、小室企画委員及び「経産省の山田課長補佐 ただいま育休中」の著者でもある山田正人企画委員が、それぞれ各ルームに参加して、ご参加のみなさまと意見交換を行ないました。
グループセッションの後、各グループで出されたキーワードなどのまとめをチャットに発表していただき、団長及び企画委員が全体をまとめ、終会となりました。

にっぽん子ども・子育て応援団では、子どもが人々の慈しみの中で育つ社会の実現に向けて、党派も分野も超えたところでの世論形成と、子ども・子育て家庭を支える政策への財源確保に向けて、これからも取り組んで行きます。応援団ですが、どうぞ応援してください。

ブレイクアウトセッションのまとめ
現状

・男性主体の会社・男性が休む時の抵抗感
・マネジメント層には女性が少なく、育休とれるようにしようといったら大反発をくらった
(仕事がまわらない、どうするんだ)
・気合で仕事をする人が多い。・日本は連絡に時間を使う傾向あり
・経営層、昭和オールドボーイズネットワークの誤解・無理解をいかに啓発していくかが推進の肝と痛感中。
・誰が休んでも回る職場になっていない・・
・自社に戻ると自分がマイノリティーになってしまう!
・育児だけでなく介護問題も起きてきている。
・男性育休1.6→96%でも日数が少ないのが課題
解決策、良き事例
・業態によって違うが、世界を見てみよう
・職場の同僚や管理職の意識の改革や、仕事のわりふり、ローテーションの工夫が必要。早めに申し出も助かる。
・余剰人員の確保・重なる業務を減らす
・工場勤務では取得率100%(ライン等で調整可能)。ノウハウを営業や管理も共有したい
・育休中、他の人に残業が発生しなかった。
・社内報に掲載(本人+上司)、トップメッセージ→これがけっこう効きます!
・フルリモートの会社では、slackやグーグルドライブで全てを管理、共有、勤務地と自宅が離れていても回っている。
・誰もが休める職場、回る職場をめざしているが苦戦。→情報共有できる場にいるといい。
・支える人も評価してほしい、というのはよく聞く。
学校現場から
現状

先生が足りない、余裕がない窮状。女性の産休の代替も見つからない学校がある。
学校での育休はとれていない。特に公立。
解決策
学校の教員や公務員も育休取得率などの公表をしてもらうと、そこらへんにも社会の目がいくようになるかもしれない。

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